ワークライフバリューを大切にしながら「健康改革」へ挑む
小川 順大(オガワ ミチヒロ) 株式会社SUDACHI代表取締役 資格:理学療法士、健康企業指導員
「SUDACHI」の提供するサービスは?
「株式会社SUDACHI」さんでは、どのようなサービスを展開されているのですか?
酢橘のような爽やかなサービスの提供を理念として、健康に関わる事業を展開しています。
SUDACHIは、3つのSUDACHI=巣立ち(関わるお客様、スタッフが自らの道を自ら選ぶことができるよう支援します)、素の人達(関わるお客様、スタッフが素の自分を出すことができるよう支援します)が由来しています。 事業内容は、リハビリ特化型デイサービス「リハビリ倶楽部」の運営・美容整体事業・健康経営ゲームの開発です。 リハビリ特化型デイサービスとデイケアの違い、リハビリ倶楽部のサービス内容を教えていただけますか? デイケアで提供されるリハビリは医師の指導及び指示箋を元に実施されます。デイケアを運営しているのは、医療法人であることが多いですが、リハビリ特化型デイサービスは、リハビリ従事者が主体となって支援を行います。 当社が運営する「リハビリ倶楽部」では、豊富な種類のリハビリマシーンによる運動療法とPT・OTによる施術を提供しています。
会社創業の経緯は?
会社設立に至った経緯を教えていただけますか?
リハビリに対して自分の理想とする価値観が芽生え始めたからです。
富山医療福祉専門学校を卒業後、富山県内の総合病院に就職し、急性期・老人保健施設・デイケア・在宅までこれまで携わりました。 回復期以外を一通り経験させていただき、PTとしての土台を勉強させていただきました。PTとしての土台を築き上げさせていただき、前職には本当に感謝しています。 その一方で、自分のリハビリに対する思いやビジョンを組織の中で実践して行くことへの難しさや葛藤も感じ始めたのも事実です。臨床現場で見えてきたリハビリに対する思いやビジョンを形にするために、「リハビリ倶楽部」を創業しました。 昔から一人っ子で、わがままだったせいか、組織人としてはたき続けることができない性格だったのかもしれません(笑)
リハビリ倶楽部さんの強みや工夫している点は、どのような所ですか?
リハビリに特化し、専門家としての視点を重視して支援ができる所です!
デイサービスは介護の場となりますが、リハビリ倶楽部は「リハビリ特化型」ということもあり、より機能へのアプローチを重視した上で利用者様への介入ができます。当然のことですが、細部に至るまでセラピストが介入するように心掛けています。 細部とは、どのような点になりますか? 例としましては、セラピストが送迎まで行っています。運転士がいないという訳ではなく、送迎シーンでその人の住んでいる家やご家族との接点をもつことを大切にしていることが理由です。 リハビリ室と住居内での動作は異なるので、そのアセスメントチェックを行うことで、生活上で必要な動きや適切な環境を見極わめています。そうすることで、より安全性の高い生活の確保ができます。 また、ご家族とのコンタクトをとることで家庭内における関係性や悩み事の情報収集をすることができており、送迎に行くとリハビリ室の中では見ることのできない情報も多くあるので、そうしたことを見逃さないようにしていますね。
健康現場や視点が変わってきたことで見えてきたものは?
病院時代とリハビリ倶楽部の患者さんをみて、何か違いはありますか?
患者さんの違いというよりは、自分自身の視点が変わったことで見えてくるものが違ってきました。
病院勤務のときは機能向上を優先していたので、身体に関する情報に捉われがちでした。もちろん退院後の生活も想定しながら訓練を行っていましたが、具体性に富んだイメージができていたかといったら何とも言い難かったです。 通所や訪問の仕事が中心になっていくと、身体機能やADLだけでなく住環境や家族との関係性、社会的背景に目を向ける機会も増えていきました。 それらを視野に入れてリハビリに取り組むのも、セラピストの仕事です。 さまざまな視点を持つことが、患者さんのやる気やモチベーションを向上させる材料になるかといったら実は違っていました。患者さんの既往歴や身体状態、ADLといったことだけでなく、その患者さんがこれまで大切にしてきたものや頑張ってきたことに着目することが大切だったのです。
そこからどのようなことが見えてきたのですか?
将来への予防はもとより、若い年齢から健康への意識を高める必要性が見えてきました。
利用者さんの割合として、男性が多くいらっしゃったということもあり、お仕事についてお話される方が多かったのです。ほとんどの方が、「病気になってみて、初めて健康の大切さを知ることとなった」と話されていました。 みなさんお仕事に勤しむのに精一杯で、ご自身の健康管理どころではなかったのかもしれません。 また、ちょうどその時期は厚生労働省の意向により予防医学分野が浸透しつつある時期でもありましたが、高齢患者さんだけでなく若年層の患者さんもいらっしゃいました。生産年齢真っ只中の年齢の人たちが、糖尿病や脳卒中等の後遺症に苦しむ姿は衝撃的でした。 ある患者さんの「こんなはずじゃなかった・・・」と呟いた言葉を受け、「早い段階から健康の大切さをしっかりと教育しなくてはならない。」と思うようになりました。 しかし、健康について考えるなんて現実的には難しいことだという考えも持っていました。 正直、健康を意識し続けるって大変なことで、楽しくなければ継続的に取り組もうと思えないのは当然ですよね。なので、普段取り組んでいるお仕事に健康の要素を組み込んだビジネスゲームを開発・商品化できたら、みなさんも楽しみながら健康について学べると思い立ちました。 そして、プランニング会社の協力を得られたこともあり、「健康経営ゲーム」をつくり出したのです。
健康経営ゲームとは?
健康やリハビリの要素を含んだゲームなのですね?どのようなゲームなのか教えていただけますか?
お金を資源として使いながら、業績を上げつつ「健康的な良い会社をつくり上げていく」ことをゴールとしたゲームになります。
ロールプレイングゲームのドラ〇エのようなイメージで、普段は見えない体力と精神力(HPとMPといった感じでしょうか笑) 複数名のグループでプレイし、それぞれの役職の目標も達成しなければならないので、参加者同士でコミュニケーションを図りながらゲームを楽しめます。「健康チェックカード−心技体−」というゲームでは、自分自身の健康状態を50枚からなるカードを確認しながらチェックすることができます。 ゲームで使用するカードには、運動テスト項目が記載されていて、それを実施することで自分の状態をチェックすることができます。チェック結果に悪い点数が出たら、やるべき運動内容も載っているので、ゲームをしながら自身の健康課題に向き合える内容となっています。 何事も楽しみながら取り組むことが大切ですね! はい!ゲーム中はプレイヤー同士でコミュニケーションを図りながらプレイできます。普段我慢とか節制といったイメージのある「健康」を、楽しいと感じることできるのがゲームの最も優れた部分だと思いますし、楽しければ自然ともう一度やってみたいといった気分になりますからね。
小川さんが、大切にしている考え方は?
楽しみながら取り組むことを大切にされているとのことですが、小川さんの仕事に対しての考え方も同様ですか?
何事も楽しむということは大切にしていますが、仕事に関しては「ワークライフバランス」という言葉が嫌いなんです。
なぜ、仕事と人生を天秤にかけるのでしょう?人生の中に、仕事や家族との時間、趣味、旅行などがある訳であって、バランスをとれなくなると、どちらかが崩れてしまうというのはおかしいと思うのです。 仕事がうまくいかなかったら人生が傾くという考え方に違和感を感じるので、バランスの均衡性を保つかどうかではなくて、両方とも大切にすべきだという考え方を持っています。 なので、私は「ワークライフバリュー」という言葉を念頭に置いて仕事に励んでいます。少し前の某コマーシャルで「24時間働けますか?」というキャッチフレーズがあったように、かつての日本はとにかく猛烈に働くという仕事観が渦巻いていました。 社会全体が過剰な疲労やストレスによって病んでいたことに警鐘を鳴らされ、時間軸における配分調整を重視した働き方をしようとなった改革案が「ワークライフバランス」でした。 しかし、実際には時間配分を守れないときだってありますし、仕事の忙しいときには残業しなくてはならない日もあります。 時間で切り分けするだけでは、個人個人の価値観までは大切にすることはできません。「ワークライフバリュー」という考え方は、働き方だけでなく人生観や家族観等の多様な価値観を重視していくという考え方です。 例えば、子供が学校で先生に褒められたら、家でパパやママに「学校で先生に褒められたよ!」って嬉しそうに話しませんか?逆に、家で楽しいことがあった話や旅行に行った話を学校の友達や先生に自慢げにいうことだってあると思います。 これは大人でも同じだと思います。仕事とプライベートは切り分けられるものではなくて、どちらも深く関係していてどちらにも価値がある。「ワークライフバリュー」という名前の方が僕は納得感を得られます。 どちらかというと健康の定義やwell-beingの方が近いと思います。働き方だけでなく人生観や家族観等の多様な価値観を尊重し、幸せな人生を育むって感じでしょうか。 この考え方を踏まえ、僕自身の仕事論や価値観だけでなく従業員それぞれの価値観も尊重していきたいといつも考えていますが、なかなか難しいですね。
小川さんの考える理学療法士の未来
時代の流れによって、働き方や人々の価値観も変化していきますね。今後の理学療法士の在り方は、どのように変化していくと思われますか?
近い将来、理学療法士をはじめとしたリハビリ職の職域・役割は狭まっていくと思います。
インターネットを利用すればどんな情報でも得られやすい社会なのですから、リハビリプログラムや治療方法などの情報は容易に入手できるでしょう。よって、セラピストが直接指導しなくても、患者さん自らが自由に必要な情報を得ることができてしまいます。 更に、リハビリシーンにもAIが着々と参入しているので、精度の高いアセスメントやプログラミングが実現可能となっています。 もはや人間の能力を超越する存在がある訳ですから、現在、理学療法士が行っているようなこともどんどん機械化が進んでいくでしょう。 しかし、人間にしか持ちえない温もりや気遣いといった感情を体現することは機械では処理できません。よって、私たちには、弱っている人に寄り添ったり、困っている人に対して気配りをするという人的魅力が、より色濃く求められてくると思います。 日本WHO協会による健康の定義として、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」とあります。 僕は「健康」について考察するときは、このWHOによる定義がベースです。文中に「すべてが満たされた」とありますが、すべてを満たすためには、日頃から健康を意識した生活を送っていなければ実現できないと考えています。 特に「社会的な健康」≒身近な人との人間関係について大切にしなければならないと思っています。 理学療法士にも新たなことが求められてくる中で、それらにしっかりと応えていくためには、時代の流れや先を見据え、自分たち自身も満たされた状態にある必要があります。健康を支援する者として、自分自身と周囲の人たちのライフバリューも大切にしていきたいと思います。
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